大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)362号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕原告Xは訴外A(主債務者)の被告Yに対する貸金債務につき連帯保証をする旨の調停が成立したところ、Yの代理人Bは右調停調書にもとづいて執行吏に強制執行を申請し、Xの動産を差押えた。
Xは強制執行申請当時、Aの弁済によりXの保証債務はすでに消滅していたから、右差押は不当であり、右不当差押はBの過失に基くものであると主張した。
判決は次のように判決してXの主張を認めた。
〔判決理由〕一、原告主張一の事実は当事者間に争いがない。右事実によると藤原(注、主債務者)自身、原告、被告間に昭和三九年四月一七日成立した調停条項(二)は藤原が一三〇、〇〇〇円を同年七月末日限り被告代理人八代俊雄方に送金して支払うことと定めているが、<証拠>によると右調停成立の当日藤原と被告代理人である弁護士八代俊雄との間で送金の方法について話合が行われ、その結果藤原が右金員を株式会社神戸銀行姫路支店の八代の普通預金口座に振込むことによつて送金することを被告代理人八代において諒承したことが認められ、<中略>他に右認定を左右するに足る証拠はない。
そうすると同年七月三一日藤原が株式会社三井銀行四日市支店に委託して電信扱により株式会社神戸銀行姫路支店の八代の普通預金口座に金一三〇、〇〇〇円を振込送金したことによつて、調停条項(一)の藤原の貸金債務は消滅し、したがつて調停条項(五)の原告の連帯保証債務もまた消滅したものというべきである。
されば調停調書所定の被告の原告に対する実体上の請求権が消滅したにかかわらず、同年一〇月二二日八代が被告の代理人として右調停調書に基く強制執行を大阪地方裁判所所属の執行吏に申請し、執行吏和田棟活をして同年一一月二八日原告の住所において動産の差押をさせたのは明らかに不当であるといわなければならない。
二、ところで八代の預金口座への前記振込について、株式会社神戸銀行姫路支店が八代に入金通知を発しこれが八代に到達したか否かは明らかでない。しかし債権者はその権利を実現するに当つて債務者の権利を侵害することのないよう留意すべきは勿論であつて、調停所定の金一三〇、〇〇〇円の弁済方法について前記のような振込送金によることの諒解が成立している以上、たとえ株式会社神戸銀行姫路支店からその入金通知がなかつたとしても、調停調書に基く強制執行を申立てるに当つては右入金の有無を調査し、以て債務名義の基本たる権利の存否を確かめるのが当然であり、<証拠>によると八代は右支店の所在地である姫路市に居住しているのであつて、右支店に問合わせることにより藤原の前記送金を容易に知り得たはずであるから、かかる措置をとることなく被告の代理人として執行吏に強制執行を申請し、原告に対する差押をさせた八代には過失があるものといわざるを得ない。
そして被告が調停調書に基く強制執行を八代に委任していたことは当事者間に争のないところであり、訴訟行為の代理人は本人の指揮監督の下にあるとみるべきであるから、八代の右申請に基づく不当な差押に因つて原告の蒙つた損害については、民法第七一五条の規定により、被告にも賠償の責任があるものといわなければならない。(石川 恭)